安部首相は1月22日の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)開会式での基調講演で「本年、さらなる法人税改革に着手する」と、法人税の実効税率引き下げに踏み込む考えを表明しました。日本の法人税の実効税率(東京都)は約38%で、主要国では米国(カリフォルニア州)の40%超に次ぐ高さとなっています。
平成26年度の税制改正により、復興特別法人税を1年前倒しで廃止し4月以降の開設事業年度から法人実効税率は35.6%に下がる見込みですが、世界的にはまだ高く、かつ他国では更に法人税率を下げる動きもあり、安部首相はダボス会議の講演で「法人に係る税金の体系も国際相場に照らして競争的なものにしなければならない」と表明しました。
平成26年度税制改正大綱の「基本的考え方」においても、『わが国経済の競争力の向上、法人実効税率を引き下げる環境作りの重要性、法人実効税率引下げと企業行動の関係などを踏まえつつ、検討を進め今後、早期に国際水準まで引き下げることを目指し、検討を加速する』と明記されていますので、法人税は減税傾向にある事は間違いありません。
個人への課税が強化(増税)となる中、法人活用が改めて注目されています。
個人への課税については、法人では前倒しで廃止予定となった復興特別税(個人は復興特別所得税)が個人においては平成25年分から25年間継続されます。更に、所得税の最高税率の引き上げ(平成27分から)、給与所得控除の上限引き下げ(段階的に実施予定)、相続税の増税(平成27年から)と、個人に対する課税は強化されており、法人への課税(減税傾向)とは対照的に今後も高所得者に対しては課税強化の方向性が示されています。
そんな中、節税ニーズの高まりもあり、法人(同族法人である不動産管理会社等)の活用が改めて注目されています。
復興特別税の廃止後の法人実効税率は、大企業は35.6%ですが、現在でも中小法人には軽減税率(中小企業者等の法人税率の特例)が適用されており、年400万円以下の所得部分の実行税率は21.4%、年400万円超から年800万円以下の所得部分は23.2%となっていますので、既に個人所得課税に比べかなり有利であると言えます。
法人の活用における所得分散による所得税等の軽減効果
個人の所得税率が高税率である場合、個人の収入を法人(同族の資産管理会社等)に移転し、役員報酬として複数の役員に収入(所得)を分散する事により、それぞれの個人の課税所得を抑えることができます。また法人から役員報酬という形で収入を得ている場合、給与所得控除を利用できる為、所得税等の軽減効果を得る事ができます。
その仕組みをイメージで表すと以下のようになります(実際にはこのような単純計算ではありません)。
法人に収入を移転させるには、法人に建物だけを移転させるのが有効だが注意も必要!
このように、個人の所得が多く実行税率が高い場合、個人の収入を法人に移転させる手段の一つとして、個人所有の賃貸不動産の建物だけを法人に時価で譲渡する方法があります。土地を譲渡等(移転)させることは法人の収益性悪化や移転コスト等の問題がありお勧めできません。法人と個人の間では土地賃貸借契約を締結し、税務署に土地の無償返還届出書を提出します。無償返還届出書を出す事により、法人への借地権の認定課税を回避し、かつ個人の土地の相続税評価額を20%減額できます。
このようにメリットのある賃貸不動産の建物移転ですが、同族間での譲渡価額(建物の時価の算定)や移転コスト(建物価格・登録免許税・不動産取得税等)の影響による効果の見極めなど、いくつかの注意点がありますので、実行する前には必ず、専門家に相談する事をお勧めします。
法人の活用は、税金面のメリット(税率が低い・経費の範囲・繰越欠損金の繰越期間(9年)・任意の減価償却ほか)だけでなく、相続対策においても大きなメリットがありますので、ご興味のある方はお問い合わせ下さい。