高田吉孝のブログ

被相続人と同居していない親族でも小規模宅地等の特例が使える(通称『家なき子』)とは?

小規模宅地等の特例「家なき子」


 以前、新聞で、『 別居の子は優遇なし 』という見出しで、別居している子供は小規模宅地等の特例が使えないと勘違いさせる記事が掲載されていたことがありましたが、

一般的にも、相続時に相続する人が同居していないと小規模宅地等の特例が利用できないと思っている方が多いようです。

一次相続では、通常配偶者が自宅を相続する事が多いので問題は少ないと思いますが、二次相続時に実家の母親と別居しているケースで、この特例が使えないと思っている方が多いようです。

小規模宅地等の特例の特定居住用宅地等の要件には、

“被相続人と同居していた親族(同居要件) だけではなく、

“被相続人と同居していない親族”     でも適用を受けられる要件、俗に言う『家なき子』の要件もあります。


同居していないとい理由だけで小規模宅地等の特例が使えないと考えるのは早計です。

では、相続発生時に被相続人と同居していない親族でも小規模宅地等の特例「特定居住用宅地等(いわゆる自宅)で特例が使えるケース
(通称『家なき子』)の場合とはどういうものかですが、

その解説の前に、
小規模宅地等の特例(の特定居住用宅地等(いわゆる自宅)で特例)が使える要件ですが、国税庁のホームページには、次のように掲載されています。

小規模宅地等の特例 要件


区分の下段の【被相続人と生計を一にする被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等】は、単身赴任などのケースなので、今回は省略します。

上の【被相続人の居住の用に供されていた宅地等】の部分を説明します。

区分=被相続人の居住の用に供されていた宅地等(亡くなった方が住んでいた自宅の土地)

そして、この取得者(小規模宅地の特例が使える相続で引き継ぐ人)ですが、以下のようになっており、

(1)被相続人の配偶者
(2)被相続人と同居していた親族
(3)そして(1)(2)がいない場合に限り、
   『被相続人と別居していた一定の親族』=「いわゆる別居の子供」
   にも小規模宅地等の特例が適用できる場合があります。

小規模宅地等の特例 取得者


その【一定の別居親族】(例えば、別居の子どもが小規模宅地等の特例を受ける為)の要件とは

○日本に住所を有するか、または日本国籍を有している

○相続前3年以内に日本国内にある自己または自己の配偶者の所有する家屋に居住したことがない

小規模宅地等の特例 一定の別居親族


 自己または自己の配偶者の所有する家屋に居住したことがない」=持ち家に住んだことがないという事で『家なき子』と呼ばれているのでしょう。これが、いわゆる『家なき子』の要件です。

”相続前3年以内に持ち家に住んでいないこと”これが一番のポイントです。

賃貸物件に住んでいることが条件ではありません。親の持ち家に(お金を払わずに)住んでいてもかまいません。


注意が必要なのは、親がマンションを買ってあげるケースなどです。

全部親が、お金を出すのもどうかとなり、一部を子どもが出すとなる事もあると思いますが、

それは、相続税(小規模宅地の特例の適用)を考えると良くありません。子どもの持ち分がたとえ10%でも入っていると、「相続前3年以内に〜」の条件をクリアできなくなってしまいます。

親が100%持ち分のマンションに住めば、『家なき子』となり、特例の適用ができます。


子どもが2人いて、○長男は賃貸マンションに居住、○次男が親のマンションに居住であれば、長男が二次相続で、母のマイホームの敷地を引き継げば、特例は適用できます。

仮に子どもが2人とも持ち家に住んでいれば、どちらか一方が自宅を賃貸で貸すか売却して、自分は借家に住むという手もあります。

ただし、3年間はその状態を続ける必要があり、相続はいつ起こるかわからないので、タイミングは難しいところはあります。

ただ、小規模宅地の特例を使えば、何千万円も相続税が変わってくる場合は、二次相続でも特例が使えるように考えていく必要があるでしょう。※但し、遺産分割の問題は別に存在する可能性があります。





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