高田吉孝のブログ

第9回 都心収益不動産による相続税対策の注意点『収益不動産購入の落とし穴』について(特定NPO法人の「日本住宅性能検査協会」のコラムへの連載文より)

 前回のコラムでは、都心収益不動産を購入し小規模宅地の評価減効果を有効に活用する事による相続税評価額(相続税額)の圧縮効果は絶大であるが、その大きな効果を得る為にはその効果の数倍もの価格(高額)の収益不動産を購入する必要がある為、当然いくつかの注意点、落とし穴があり、最も多くの失敗(落とし穴)は、やはり物件の選別(物件選び)だと書きました。
 
 過大な借入により相続税が少なくなって相続を楽に乗り切れたとしても、相続後に収益不動産の収支が悪くなって、キャッシュフローが回らなくなってしまっては元も子もありません。その収益不動産を売却しても借入の返済ができず債務超過になってしまうような相続税対策などやらないほうが良いでしょう。
 
 多くの失敗は、相続税対策(相続税を減らす事ができる)という目的の為に、不動産投資では最も注意するべき“物件選び”と“資金計画”が提案者任せになり、おろそかになっている事から起こります。
 
 自己資金で収益不動産を購入するのであれば、物件選びが多少不十分であっても他の財産まで全て無くしてしまうような致命的な失敗になることはないでしょう。失敗しても資産価値の目減り(売却時の不動産価格下落)で留まり、借金返済の為に自宅まで売却しなければならなくなり破綻してしまうという事はありません。
 
 ところが、相続税対策で収益不動産を購入する場合、多くの場合借入金が中心の資金計画となっています。まだ“借金=相続対策”と思っている方が多いのでしょう。
 自己資金で購入する場合と違い、借入金中心の資金計画で収益不動産を購入する場合は、リスクが高いにもかかわらず“相続対策”という事で、その効果ばかりに関心が行き、本来最も重要な“物件選び”が他人(提案者)任せになっているケースを多く見かけます。
 
 物件選びで、最も注意しなければならいのが、中長期的に安定した収支(キャッシュフロー)である事であり、想定の収入や現況の収入をベースに計画してはいけません。現時点の家賃相場を良く調べ、将来的な値下がりと空室率も考慮するようにしましょう。
 
 収入面だけでなく、支出面でも将来的な維持コスト(リフォーム費用や大規模修繕費用)が低く見積もられているケースが多いので注意が必要です。
 
○甘すぎる収入見込み
・満室想定収入(想定家賃)は信用せず、現状の家賃相場を確認する。
・現況家賃が高い場合、入居者入れ替わると家賃が下がる
・稼働率100%、家賃下落なしは楽観的すぎる。
・基本的に家賃は下落するものと考える。
 
○維持コストを少なく見積もっている、または見ていない。
・収支計画に日々のリフォームコストや大規模修繕の費用が含まれていない。
収益不動産購入の落とし穴

 収益不動産を購入する場合には収支計画だけでなく、建物そのもののチェック(構造、修繕履歴、遵法性)や土地についての調査、事務所ビルの場合、テナントの信用調査も必要であり、また多額の保証金を預かっている場合、購入後すぐにテナントに出られると保証金の返還と空室で資金が回らなくなったりする事がありますので、そういう事態も想定した資金計画にする必要があります。




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