今は、16日(月曜日(祝日))の夕方で、東京は日が差していますが台風18号はまだ本州を縦断中です。日付が替わるころには北日本の東海上で温帯低気圧になる見込みとのですが、勢力は再び強まるとの事ですので、北日本ではまだまだ注意が必要です。
昨日は、和歌山県串本町田並で竜巻のような突風が吹き、民家十数軒の瓦や屋根が飛ばされ電柱も倒れ数名被害にあわれました。今月2日にも竜巻による大きな被害が発生しており、越谷市だけでも約900棟にも及んだ建物損壊のニュースもまだ記憶に新しいかと思います。
先週、お客さん(地主さん)とそんな話になり、お客さんから「台風や地震などで、台風や地震で建物が全壊したら、借地権はどうなるの?」「建物に住めなくなったら借地権はなくなるんじゃないの?」と聞かれました。
借地権は、そう簡単に消滅する事はありませんが、地主さんは、意外と借地権の強い権利について理解されてない事が多いように思います。逆に借地人さんの方が詳しい事が多いです。その辺の意識の差が、地主さんと借地人さんとのトラブルの要因でもあると思います。
さて、本題の『お客さんの質問「台風や地震などで、台風や地震で建物が全壊したら、借地権はどうなるの?」「建物に住めなくなったら借地権はなくなるんじゃないの?」』ですが、簡単にまとめると、
地震や台風などの自然災害だけでなく、火事などによって建物が全壊、全焼し住めない状態になっても、それだけで借地権が消滅する事はありません。
例え契約書に、地震またはそれによる津波により建物が滅失した場合には借地権は消滅するという特約が書かれていても、そのような特約は、借地法11条、借地借家法9条に基づき無効なります(最判昭33・1・23)。
建物がなくなってしまった場合、底地所有者から第三者がその土地を買って所有権移転登記を完了すると、借地人は第三者(買主)に借地権を対抗できなくなってしまいますが、借地人がその建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を、土地上の見やすい場所に掲示することで、第三者への対抗力は建物の滅失から2年間認められます(借地借家法10条2項)。
「建物に住めなくなったら借地権はなくなるんじゃないの?」という疑問は、土地上の建物が朽廃すると借地権が消滅する?と言う話から来ていると思いますが、この部分は少しややこしいので調べてみました。結論から書くと、
旧借地法のもとで設定された借地権について、「建物の朽廃による消滅」は、従前の例(旧借地法)が適用されます。
当事者の合意で借地権の存続期間を法定期間(非堅固建物については20年)と定めた場合には、当該期間中に建物が朽廃しても借地権は消滅しない。
存続期間を定めなかった場合または法定期間(旧借地法2条1項、同法5条1項同条項)よりも短い期間の定めをした場合には、法定期間のとおりとなる一方で、法定期間満了前に建物が朽廃すれば借地権は消滅する(旧借地法2条1項但書、同法5条1項後段)。
となっていました。
旧借地法第2条
借地権ノ存続期間ハ石造、土造、煉瓦造又ハ之ニ類スル堅固ノ建物ノ所有ヲ目的トスルモノニ付テハ六十年、其ノ他ノ建物ノ所有ヲ目的トスルモノニ付テハ三十年トス但シ建物カ此ノ期間満了前朽廃シタルトキハ借地権ハ之ニ因リテ消滅ス
2 契約ヲ以テ堅固ノ建物ニ付三十年以上、其ノ他ノ建物ニ付二十年以上ノ存続期間ヲ定メタルトキハ借地権ハ前項ノ規定ニ拘ラス其ノ期間ノ満了ニ因リテ消滅ス
旧借地法第5条
当事者カ契約ヲ更新スル場合ニ於テハ借地権ノ存続期間ハ更新ノ時ヨリ起算シ堅固ノ建物ニ付テハ三十年、其ノ他ノ建物ニ付テハ二十年トス此ノ場合ニ於テハ第二条第一項但書ノ規定ヲ準用ス
2 当事者カ前項ニ規定スル期間ヨリ長キ期間ヲ定メタルトキハ其ノ定ニ従フ