高田吉孝のブログ

第3回不動産を使った相続対策の注意点“「サービス付き高齢者向け住宅」の有効活用編”

(NPO法人日本住宅性能検査協会コラム掲載のものを転載)


今回も前回に引き続き、「サービス付き高齢者向け住宅」の有効活用の注意点について書かせていただきます。

 前回のコラムは、私がセミナーやブログなどで情報発信している内容の中から、422日発売の週刊ダイヤモンド4/275/4合併号のP68P69で取り上げられた点『土地活用でサ高住提案が急増、建築会社の甘い試算は要注意』“すさんな予測収支にだまされるな”の部分を中心に書きました。

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第二回目のコラムにも書きましたが不動産を使った相続対策提案の代表格と言えば、土地所有者(主に地主さん)向けへの賃貸住宅(アパート・マンション)の建築提案です。


ところが、最近は空室や家賃下落により、立地条件(交通の便等)の良くないエリアでは、地主さんもアパート・マンションの建築には慎重になっている方も増えてきました。


少し話は変わりますが、現在、不動産仲裁機構に寄せられる“サブリース問題”の相談も、やはり立地条件の良くないエリアの方からの相談の方が深刻(大幅な家賃減額で借入返済が困難になるケース)です。

 問題となっている会社は、30年間一括で借り上げ、家賃保証をするという安心感を売りに立地条件の良くない場所にどんどんアパートを建て、いざ会社の業績が悪くなると一方的にサブリース契約を解除したり大幅な家賃減額や新たな費用負担などをオーナーに要求し、大きな問題となっています。415日の衆議院予算委員会でも取り上げられました(詳しくは大谷理事長のコラムを参照下さい)。


最近は、車の台数も減り駐車場も空きが増えています。地主さんとしては、固定資産税の負担や将来の相続税の負担をなんとかしたいと思いますが、駐車場へのアパート・マンションの建築も将来の不安が残ります。何か良い“有効活用”方法がないかと考えているところへ


高齢化社会への対応(世の中のニーズ)&国の補助金と優遇税制があって、更に家賃保証(サブリース)も有り安心なのが、『サービス付き高齢者向け住宅』の有効活用です。と言う提案が増えています。


やはり相続対策にもなると言う事で、そのほとんどが全額借入での提案です。

賃貸マンション・アパートの建築には慎重になった地主さんも、老人ホームのようなものならこれからの高齢化社会でも安心だと考え安易に建築しています。


サービス付き高齢者向け住宅の有効活用の最大の注意点については、前回のコラムにも書きましたが、「サービス付き高齢者向け住宅」の有効活用における最大のリスクは、“運営事業者(介護事業者)”次第でその有効活用の運命が決まる点です。


 「サービス付き高齢者向け住宅」は“老人ホーム”と違い、あくまでも住宅で有り、介護報酬による収益構造が弱い為、運営事業者は上手な運営をしないと住宅のサブリース収益頼みになってしまいます。
 しかし現在提案されている「サービス付き高齢者向け住宅」は、建築会社などによるハード(建物)先行の提案が多く、また運営事業者も新規参入のケースも目立ち長期的な事業として考えるには、不安要素が多いと考えています。


 「サービス付き高齢者向け住宅」はまだまだ供給が増え続けます。まやかしの補助金や優遇税制も地主さんの有効活用心(こころ)を後押しし供給過剰になるまで建築されるでしょう。

 既に、「サービス付き高齢者向け住宅」の優勝劣敗は出始めています。集客力と運営に優れている事業者もあり、稼働率の高いところがある反面、集客がうまくいかず、スタッフやサービスが不十分で運営が困難になっているところもあります。


 そこで、“サブリース問題”がここでも出てきます。いくら“家賃保証”が約束されていても、運営が成り立たなくなると、最悪は撤退、いきなり撤退まではならなくとも、まずは“家賃の値下げ”です。これから「サービス付き高齢者向け住宅」供給が増え、競争が激しくなると、間違いなくこの問題が起こります。

 

 相続対策と称して、全額借入で安易に「サービス付き高齢者向け住宅」を建築すると、大失敗となってしまう可能性が高いです。冒頭の週刊ダイヤモンドの抜粋記事に“地主が気をつけるべき点”を良く理解して下さい。

そして根本的な注意点は、サービス付き高齢者向け住宅(賃貸住宅)と介護付き有料老人ホーム(介護施設)の違いを良く理解していない事からくる漠然とした安心感(老人ホームのようなものだから、これからの高齢化社会の有効活用として安心だと思っている点)ですので、以下に「老人ホーム」と「サービス付き高齢者向け住宅」の違いに関する事項をまとめておきます。


介護施設と高齢者向け住宅


高齢者のための住まいには、「介護施設」と「高齢者向け住宅」があり、厳密に言うと「施設」と「住宅」はそのカテゴリーは別々のものですが、実情はかなりややこしい区別なので、よく混同されて表現されます。


「サービス付き高齢者向け住宅」の事を介護施設と呼ぶ人がいますがそれは間違いであり、あくまでも、「サービス付き高齢者向け住宅」は住宅なのです。細かい事と思われるかもしれませんが、この違いが非常に大事なのです。


 「サービス付き高齢者向け住宅」と「介護付き有料老人ホーム」がわかっていない人が多いなか、『介護土地活用セミナー』や『介護賃貸』と称して、「サービス付き高齢者向け住宅」の建築を勧めている人達もいる為、聞いている方は、介護施設と高齢者向け住宅の違いがわからなくて当然です。


住宅と施設の区分が整理された表がありましたので、転載します。

まず、上記の名称で呼ばれているものは、住宅であり、介護サービスは外部のサービスを利用します。

高齢者の住まい(住宅)


 そして、施設は下記の通り、特別養護老人ホームを代表とする介護保険施設とその他の施設があります。


 住宅との違いが、外部の介護サービスを使うかどうかであれば、わかり易いのですが、実際には施設の中にも外部の介護サービスを利用するものもあり、特に有料老人ホームには、介護付きと住宅型と健康型が有り話をややこしくしているように思います。


高齢者の住まい(施設)

 

サービス付き高齢者向け住宅は、あくまでも賃貸住宅であり、必須となっているサービスは「安否確認」と「生活相談」だけです。それもあくまで日中のこと「24時間緊急対応があるとはいっても、スタッフが常駐しているところは少数であり、夜間は外部の警備会社と契約しているだけのところが多いのが実情であり、介護付き有料老人ホームとは大きく異なります。


また、入居者が必要な介護サービスを外部の介護保険事業所のサービスを利用する為、介護付き有料老人ホームと比べ、サービスのバラツキがかなり大きい為、評判の良いサービス付き高齢者向け住宅とそうでないサービス付き高齢者向け住宅の区分けが明確になり、サービスの質で入居者を集められないサービス付き高齢者向け住宅は、家賃を安くしていかざるを得ません。

「サービス付き高齢者向け住宅」はサービスの質のバラツキが大きい!



バラツキが大きい


 
 一般のアパート・マンションと違い、運営事業者の良し悪しがその有効活用の運命を握っています。簡単にいうと“つぶしがきかない”建物ですので、最初の運営事業者選びが最も重要になります。

サ高住と老人ホーム違い(サービス)


「有料老人ホーム」と「サービス付き高齢者向け住宅」違い


老人ホーム違い


契約形態の違い


 サービス付き高齢者向け住宅では、住宅部分については建物賃貸借契約を結ぶとともに、生活支援サービスを提供する場合は、サービス利用契約を別途締結する。


一方、有料老人ホームの多くは利用権方式を採用している。

これは、入居の際に一時金を支払うことで、終身にわたり居室と共用施設を利用する権利と、介護や生活支援サービスを受ける権利が保障されるという契約形態である。


サービス付き高齢者向け住宅では賃貸借契約を結ぶことが前提とされていますが、これは利用権方式による契約と比較し、入居者の居住の権利を確保しやすいとみなされているためである。

一方有料老人ホーム(特定施設)は、住居もサービスも同一事業者によって包括的に提供される施設と捉えることができる。


適用法令と管轄省の違い

「有料老人ホーム」は、老人福祉法介護保険法に規定され、厚生労働省の管轄になる。

「有料老人ホーム」を設置をする際には、管轄である都道府県または政令指定都市が、有料老人ホーム設置運営指導指針を設けており、それに基づいて施設運営事業所は有料老人ホームの設計をしたり、人員を配置を行う。


 特に「介護付有料老人ホーム」の場合は、「介護サービス」について常時介護に対応できる職員の勤務体制を整えてなければならなかったり有資格者の最低人数などが細かく設定されており、これらの体制がきちんと整っていない状態で運営を続けていると、ペナルティが与えられる場合もある。

 このように「有料老人ホーム」では厳しい基準・監視下で運営されているので、将来、介護度が高くなった場合でも、引き続き専門のスタッフによって介護されるという安心感がある。

介護付き有料老人ホーム(特定施設)の収益構造


 有料老人ホーム(特定施設の指定のある介護付き有料老人ホーム)は、老人福祉法上と介護保険法に規定された施設で、介護保険法の中で規定された「特定施設入居者生活介護」サービスが受けられる

「特定施設入居者生活介護」は、特定の施設(具体的には、有料老人ホーム等)において、入居者が利用する介護保険サービスのことです。


介護事業者は、要介護度に応じて1日ごとに固定額の介護報酬を施設が請求できるので、施設はその日に提供した介護サービスの種類や提供量にかかわらず安定した収入が入る。

 利用者もどのようなサービスを受けても費用負担は一定額になるので、安心感してサービスを使える(施設が算定する介護報酬額の10%が利用者自己負担、90%が国保連からの支払いとなる)。





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