高田吉孝のブログ

不動産を使った相続対策の注意点について(第2回目)

第1回目では、最近『相続税の増税対策』が恰好のセールストークとなっている“土地の有効活用”“収益物件の購入”をはじめとした“不動産を使った相続税対策”の注意点の解説の前に、相続税の税率構造の変更(最高税率の引き上げ)などの平成25年度税制改正内容の一部を解説させていただきました。

その平成25年度税制改正の関連法案ですが、3月29日の参院本会議で可決され、同法が成立しました。


世間では、相続税増税対策セミナーなどと銘打って、あちらこちらでセミナーが開催されています。

その多くは、自社の商品をPRする為のものです。主催する会社によって、最終的に勧めたい(提案したい・・売り込みたい・・)商品は違いますが、基本的には見込み顧客を集客する為のセミナーです。

私自身もセミナーを主催する事がありますので、その手法そのものを否定するつもりはありませんが、まずは主催者の狙いを理解した上で参加する事が基本です。

相続対策の代表格と言えば、土地所有者(主に地主さん)向けへの賃貸住宅(アパート・マンション)の建築提案です。

この手法は、今も昔も変わりません。確かに、相続税の節税効果は大きいです。

その仕組みを具体例で説明しますと、こうなります。

建築相続税効果



この図は、250坪(時価2.5億円(100万円/坪)、相続税評価額2億円(80万円/坪))の土地に延床面積200坪のマンションを総事業費1億6000万円で建築した場合の相続税の節税効果をまとめたものです。

なお、わかりやすくする為、及び多くのセミナーでは、効果を大きく見せる為、相続税率を50%で計算していますが、実際に実効税率で50%になる場合は、相当な課税資産額(相続人1人当たりの課税財産が3億円を超えた部分から50%)の場合だけです。

ここでは、駐車場のままだと2億円の相続税評価額に対し50%の相続税がかかるため相続税の額が1億円になります。

※2億円×50%=1億円(もとの相続税額)

対して、この土地にマンションを建築すると、建物の評価額は6000万円になるとしています。

その理由は、建物の固定資産税評価額が総事業費の0.5〜0.6倍程度となり

更に、他人に貸す為、貸家の評価となり更に0.7倍となる為です。

※1億6000万円×0.54×0.7=6000万円(建物の評価額)

現在のように建築費が高騰している場合は、総事業費(建築費)が大きくなるので、もっと評価が下がると思われます。

そして、土地は、貸家建付地となり、借地権割合が0.6の地域の場合、

※2億円×0.82=1億6400万円(土地の評価額)となります。

土地建物合計すると6000万円+1億6400万円=2億2400万円となり、総事業費を全額借入金とした場合マイナス1億6000万円の評価となりますので、

※2億2400万円−1億6000万円=6400万円(建築後評価額)

6400万円の相続税評価額となります。そこに50%の相続税がかかる為、

  ※6400万円×50%=3200万円(建築後の相続税額)

となります。

よく借金をすれば相続財産が減ると勘違いされる方がいますが、1億円の借金をして、手元にその現金1億円があれば、プラマイゼロなので、借金で相続財産が減るのではありません。

あくまでも、土地・建物の評価が下がる事により全体の評価が下がる為です。

ここでは、総事業費としての借金、マイナス1億6000万円に対して、

建物の評価が、プラス6000万円であり、そこでの評価減が1億円となり、

そこに、土地の評価減がマイナス3600万円加わり、


全体としての相続税評価額が、マイナス1億3600万円となった為、

もともとの土地2億円の相続税評価額が、マンションを建築する事により全体で6400万円の評価額になったのです。

このように、賃貸マンションやアパートを建築する事は相続財産の評価を下げる為には、非常に有効な手段であり、ここ数十年も節税対策の代表格となっていました。

その多くの提案は、全額借入金で建築をするパターンとなっています。過去のように人口が増加し、住宅が不足していた時代は良かったかもしれません。

既に人口が減少する時代に突入し、家が余っている現状では、家賃の低下や空室の増加で、相続税は下がったが残された家族が借入金の返済に苦しむといった事態も起こっています。

次回は、その辺の問題点について事例を交えて具体的に解説したと思います。 





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