高田吉孝のブログ

平成18年度税制改正大綱について(相続・不動産関連)

与党(自由民主党・公明党)は、先日15日、「平成18年度税制改正大綱」をとりまとめ、公表しました。
 概要については、既に新聞やWeb上に公開されていますので、ここでは、当ホームページに関連しそうな項目(相続・不動産関連)について少しまとめてみました。
全文は→ 「平成18年度税制改正大綱」
http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2005/pdf/seisaku-018a.pdfをご覧下さい。

相続時精算課税制度の住宅取得資金の特例の2年延長

相続・贈与関連では、住宅取得資金の贈与特例(いわゆる「5分5乗方式」)は予定通り平成17年12月31日をもって廃止されますが、相続時精算課税の基礎控除(2,500万円)に住宅の取得等をすると上乗せされる1,000万円部分の特例は2年間期間延長されます。

物納制度の改正(2006年4月1日以後の相続)

市街化調整土地や無道路地について、他に物納財産がなければ物納対象とする、と一見物納の条件が緩和されるように見られる改正もありますが、実際の実務は厳格に厳しくなりそうです。これまでは「とりあえず物納申請」をしておいて、測量等は物納申請後で多少時間がかかっても、税務署側もそれを容認していました。物納完了まで何年もかかるケースが多かったのですが、これからはそうはいかず、申請側にも税務署側にも厳しい実務対応が求められそうです。
 測量図や境界確認書は物納申請時提出が原則となり、その提出がなければ税務署長がその提出を求め、20日以内に提出がなければ物納申請は却下となります。ただしこの期間を最長で1年は延長することもできますが、3ケ月ごとに延長の届出が必要になるとのことです。
 その変わりと言う訳ではないでしょうが、税務署側は物納申請時又は上記延長日から3ケ月ないし9ケ月以内に物納の結論を出すそうです。結論が出ないままこの期間を経過すれば物納許可があったものとされるそうですので、申請者にとっては、早く安心?できるようになるかもしれません。
 また物納なら利子税(金利相当額)は不要でしたが、これからは物納審査事務期間を除き物納完了までの期間について利子税がかかるようです。

延納期間中の物納選択

相続税を延納中の者が、資力の状況の変化により延納による納税が困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、延納の残額を限度として、物納を選択することが出来る制度が創設されます。(この場合における物納財産の収納価格は、その物納申請時の価格となります)

公示制度の廃止(2006年4月1日から)

所得税(長者番付)、相続税・贈与税、法人税などが対象。05年4月に施行された個人情報保護法により、個人情報の保護に重きを置くようになりました。長者番付けは、もう見られなくなります。

登録免許税の特例措置の縮小(2006年3月31日)

特例措置の廃止により、遺贈・贈与では2%。相続、保存登記では0.4%となります。但し、土地の売買による所有権の移転登記は1%が継続となりました(2006年4月1日〜2008年3月31日)。

不動産取得税の標準税率の特例措置

標準税率(本則4%)を3%としている特例措置の廃止が予定されていた不動産取得税は、店舗、事務所等の住宅以外の家屋に係る特例措置は廃止(2年間に限り標準税率を3.5%とする経過措置有り)されますが、その他の多くは平成21年3月31日まで延長されました。

同族会社の損金算入制度を見直し(オーナーへの給与支給に増税措置)

 同族会社を持つ地主さんにとって、気になるのは、同族会社が支給する社長への給与のうち「給与所得控除相当額」を損金不算入とする措置です。これは、個人の事業と、それと実質的に変わらないような同族法人との税負担格差を是正するのが目的と思われます。
 現状では、同族会社からオーナー社長へ給与が支給された場合、個人・法人全体の課税範囲は、法人税は、支給給与部分が損金に算入され、所得税は、支給給与部分のうちの一定額(給与所得控除)が控除となって減少します。会社からの給与という形態を採ることによって、法人・個人の両方で控除できる部分が発生することになり、これが個人事業形態の税負担との間に不均衡があるとして見直されたものだと思います。具体的には、所得税は現行どおりだが、法人税段階での社長に対する給与のうち「給与所得控除相当額分」は損金に算入されなくなるようです。
 適用会社は、「社長及び同族関係者等が株式の90%以上を所有し、かつ、常務に従事する役員の過半数を占めている」同族会社ですが、おおかたの同族法人は、その対象となると思いますので、同族法人に対する法人税は増税となることは間違いないと思います。


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