高田吉孝のブログ
最高裁が初判断、「遺産分割前の賃料収入は、法定相続割合で取得すべき」…
賃貸不動産の所有者が死亡し、複数の相続人がいる場合に、遺産分割が確定するまでの間に発生した賃貸料などの収入をどう分配するかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(才口千晴裁判長)は8日、「遺産分割までに生じた賃料収入は、遺産である賃貸不動産とは別の財産なので、各相続人が法定相続割合に応じて取得すべきであり、後に決まった遺産分割の影響は受けない」との初判断を示し、遺産分割結果に従って分けるよう命じた2審判決を破棄、審理を大阪高裁に差し戻しました。
判例:平成17年09月08日 第一小法廷判決
平成16年(受)第1222号 預託金返還請求事件
原審:大阪高等裁判所 (平成15年(ネ)第3264号)
主文:原判決を破棄する。本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
原審の判断を是認することができない理由については、
「遺産は,相続人が数人あるときは,相続開始から遺産分割までの間,共同相続人の共有に属するものであるから,この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は,遺産とは別個の財産というべきであって,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」
等としています。
民法では、『相続人が複数いる場合には、相続財産はその共有に属し(同898条)、各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利・義務を承継する(同899条)』となっています。
しかしながら、この共同所有関係は、遺産分割が行われるまでの過渡的・暫定的な所有形態ですので、最終的には、遺産分割を行うことによって、相続財産を構成する個々の財産について、共同相続人のいずれかに確定的に帰属し、その効果は相続開始時にさかのぼってその効力を生ずるとされています(同909条)。この点を強調すると、遺産分割によって元物(ここでは賃貸不動産)を取得した者が、当然に果実(ここでは賃料収入)をも取得することとなり果実は独立に分割の対象とはならないと考えられそうですが、これまでの判例でも、果実は相続財産である元物から相続開始後に生じたものであるので、相続財産とは別個の共有財産として扱うものとの考えられていました。
今回の事件では、遺産分割確定までの賃料収入の分け方について、下級審で判断が分かれていましたが、今回初めて、最高裁が法定相続割合で分配するとの判断を示しましたので、今後同様の事件についても、また実務上の対応についても大きな影響を及ぼすことになると思います。
同様の争いが起こってしまっている場合であれば、今回の判断が示されたことにより、果実(賃料収入など)については、法定相続割合での分配でまとめることになると思いますが、相続(遺産分割)に携わる者としては、最初から果実を法定相続で分配することを前提にしてしまうと、実務上は少々複雑になってしまうような気がしてしまいます。
今回の訴訟は、1996年に死亡した大阪府吹田市の男性の妻が2001年、息子を相手取って起こしたものですが、最初の分割争いから10年近くも親子間で争っていることになります。天国に行ったお父さんはさぞかし悲しんでいることだと思います。このような争いを防ぐためにも、遺言書などによる争族対策をおすすめ致します。
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