高田吉孝のブログ

定期借地権の前払い賃料の取り扱いについて(を相続マニュアルに追加しました)

国税庁より、平成17年1月17日に事前照会に対する文書回答として「定期借地権の賃料の一部又は全部を前払いとして一括して授受した場合における税務上の取り扱いについて」が公表されていますがこの中で、「契約期間にわたる賃料の一部を一括前払いし、賃料の残額月払いと併用する場合」の書式例が掲載されています(1月29日付ブログで紹介済みのもの)。

従来、定期借地権を設定する契約の際には、借地権設定の対価としての権利金や契約期間中に地主が預かる保証金が授受されてきました。しかし権利金の場合には、地主サイドでは、受け取った時に一時に所得税・住民税の累進課税が適用され、個人の場合、最高50%税率で課税されてきました。このためか権利金方式を利用するケースはあまり多くなかったようです。

定期借地権の一時金が権利金の取り扱いを受ける場合は、借地人側は借地権として資産計上するため、契約期間の終了時に一時に全額を損失計上しなければなりませんが、この一時金が前払い賃料として認められれば期間に応じて早期に費用化できます。
この前払い賃料方式では期間に応じた収入金額を計上することができるため有利になります。但し一時金が前払い賃料として認められるには、その書式例のように契約で一時金が前払い費用としての性格を有することを明確にして、またこれに沿った取引実態がなければなりません。

例)時価1億円の土地に対して地代を年2%とした場合

・定期借地権設定時に前払い地代方式で地代の総額を一括払いすると
1億円×2%×50年=「1億円の地代の前払い」となる。
・借地人はこれにより、毎年200万円づつ、費用化できる。
・地主側は1億円の地代を受け取り毎年200万円づつ収益計上できる。

以下に税務上の取り扱いと契約書作成にあったてのポイントを解説します。

1.前払い賃料の税務上の取り扱い

文書回答事例における前払い賃料とは、定期借地権の設定にあったて、借地権者が借地権設定者に対して契約期間にわたる賃料の前払いする場合の一時金のことを言い、書式例に準拠した契約が締結されているという前提で、前払い賃料の所得税法上の取り扱いは次の通りとなります。

     借地権者
     (借地人)
     ・前払い費用として計上(資産)
     ・当該年分の賃料を必要経費の額に参入

     借地権設定者
     (土地所有者)
     ・前受け収益として計上(負債)
     ・当該年分の賃料を収入金額に参入

2.契約書作成にあたってのポイント

上記のような税務上の取り扱いがされるためには、下記のような留意すべき事項が考えられます。

・定期借地権設定時に授受される一時金が前払い賃料であり、契約期間にわたって賃料の一部に充当することを明確にする。
毎月の充当額=前払い賃料÷契約期間(ケ月)
・前払い賃料と残りの賃料月額を明確に区分する。
・中途解約の場合、前払い賃料の未経過分返還の取り扱いを記載する。
・前払い賃料の未経過分とは別に中途解約時の違約金等を定める場合、算定方法を明確にして両者を区別しておくことが望ましい。
※中途解約時に、前払い賃料の未経過分の全部又は一部を違約金等とみなして
 借地権者に返還しない場合、前払い賃料として取り扱われません。
・月額賃料の金額は、前払い方式によらない賃料水準と比較して同水準となるように設定する。




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