高田吉孝のブログ

金融のワンストップ化について思うこと2「金融コングロマリットとは」

前々回、「1400兆円の個人マネーの行方と金融のワンストップ化について」についてふれ、その中で、日本もいよいよ金融コングロマリット(複合企業)の時代に突入するのだなと実感するようになったと書きました。
最近、新聞などでもよく見かける言葉ですが、「金融コングロマリットってなんのこと?」というご質問もありましたので、少し解説しようと思います。

コングロマリット(conglomerate)とは、巨大複合企業グループのことで、金融コングロマリットとは、銀行、証券、保険のうち複数の業態を含み、広範囲のサービスを提供する金融グループのことをいいます。

90年代以降、世界的にこの金融コングロマリットの組成が進み、欧米にはシティ、UBS、クレディ・スイス他いくつかの金融グループが既に出来上がっています。顧客保護制度も確立し、ほぼ体制が出来上がり、一流と言われる金融コングロマリットは、世界の市場をにらみながら積極的な運用を心掛け、実績を残しているようです。

現在、日本の個人金融資産は1400兆円で、日本人は、安全志向が強いと言われていますが、超低金利が続く中で、資産運用に苦しでいるのも事実です。
日本の個人金融資産は戦後一貫して預金を中心としたリスクの少ない運用が行われてきましたが、安心して預けられるような魅力的な金融商品が日本になかったのもその要因だったのではないでしょうか。

 日本では銀行と証券業務の間には厳然として垣根があり、リスク商品への抵抗感もあって両方の分野の特性を生かした商品が出てきませんでした。欧米では、規制緩和が進んで画期的な新商品が相次いで誕生しました。現在日本でも画期的な商品が誕生していますが、そのほとんどは欧米で作られた商品の焼き直しです。

金融業界においては、伝統的に銀行と証券会社、保険会社は互いのビジネスを営むことを禁じられてきました。銀行業、証券業、保険業の間には厳格な業務の垣根が築かれ、銀行、証券、保険の各業者の監督はそれぞれ独立した機関によって担われてきました。

「金融サービス立国」を目指している金融庁は、昨年12月に、間接金融(銀行)に偏っていた金融の流れを「官」の主導ではなく、「民」の力による直接金融や市場型間接金融を活用した金融商品・サービスを選択できる活力ある金融システムをの創造、利用者保護ルールの徹底、IT の活用等による競争力強化や市場インフラの整備、国際的な金融規制の緩和を背景にした金融の機能分化や金融コングロマリット化等に対応する制度整備、などを示した2005年度からの2 年間を重点強化期間とする「金融改革プログラム−金融サービス立国への挑戦−」を発表しています。

また先月28日には、銀行や保険、証券など業態を超えた金融コングロマリット(複合企業)に対する監督指針案を公表し、7月から適用するとしました。新指針の対象になる金融グループは外資系を含め60以上になる見通しです。

指針案は金融コングロマリットを、(1)大手銀行・証券グループの「金融持ち株会社型」(2)ソニー、イトーヨーカ堂など事業会社が事実上の持ち株会社になっている「事業持ち株会社型」(3)一部の保険会社など金融機関が親会社の「親会社型」(4)外資系証券会社などの「外国持ち株会社型」、の4つのタイプを提示し、グループ内で顧客情報をきちんと分けて管理しているか、証券会社の破綻がグループの銀行に及ばない仕組みができているか、などを見極めるとしています。

低金利が続き、ペイオフも全面解禁される中、顧客ニーズに合った資産のリスク・リターンの提供が求められています。一方人口高齢化により、安定所得を生む資産に対する需要も増大しています。金融コングロマリットが単なる規模の拡大、金融機関の覇権争いにならず、真に顧客サービスの向上につながることを期待します。

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