高田吉孝のブログ

団体信用生命保険の相続税法上の取扱いについて

1.団体信用生命保険とは

団体信用生命保険(通称「団信」)は、住宅ローンの返済途中で死亡、高度障害になった場合に、本人に代わって生命保険会社が住宅ローン残高を支払う制度です。

金融機関が、ローンの利用者をまとめて生命保険会社に申し込むもので、掛け金も安く、また加入時年齢による条件の差がなく、メリットの多い保険であるといえます。

特定の保険会社を指定するのではなく、金融機関を通じ各生保が分担で引受けを行います。

銀行ローンでは、利息に保険料が含まれているケース(内枠方式)も多いため、保険料を負担している感覚をもたれている方は少ないかもしれませんが、団信加入ができなければローンが通らないことが多く、ほぼ強制加入というのが現状です。


2.団信は特殊な保険

生命保険は、親族以外を受取とする保険契約(第三者受取)を原則として認めていません。

借金のカタに生命保険に加入させられる場合や、保険金殺人の可能性など、倫理上の問題があるからです。

 ところが、団信については金融機関が保険金を直接受け取ることが認められている特殊な制度であるため、専門家の間でも税務取扱いに関する誤解が多くみられます。

アパートローンにも適用される制度ですので、資産家の方のお客様の相続税に関する疑問もでてきます。


3.団信加入の借入れは債務になるのか?

通常、相続税の計算は、被相続人が亡くなった日時点での、プラスの財産からマイナスの財産を引いた金額で行われます。

お客様の団信つきのアパートローンに対しても、残高明細書に死亡時点の借入残高が記載され、それを元に手続を行うことになります。

通常の相続申告手続の課程では、特に注意しなければマイナス項目として計算されるような気がします。


4.法律上の取扱い

残債はなくなるのに債務控除できるとなると、これは相続対策として画期的なものになります。

団信の税務取扱いついて触れた条文はありませんので、判例や通達を調べました。 一部抜粋します。


 攵赦44年5月26日通達】
(保険会社から国税庁への問合せに対する回答)

『3.死亡事故が起きた場合保険事故が死亡であった場合の賦払償還債務の免除に関しては、相続税の課税上は相続人によって承継される債務がないものとし、被保険者である顧客およびその相続人について所得税の課税関係は生じない。』

◆攵赦63年4月6日 判例】

被相続人の死亡に伴う保険金が被相続人の住宅ローンに充当された場合、住宅ローンに係る債務は相続人が負担するものではなく、相続税法上の債務控除の範囲には入らないとされた裁決事例

『相続税法上、債務控除ができる「確実な債務」とは、債務が存在するとともに、債権者の債務の履行を求める意思が客観的に認識しうる債務、または債権債務成立に至る経緯から、事実的、道義的に履行が義務付けられているという場合、すなわち債務の存在のみならず、履行の確実と認められる債務と解される。本件債務は、保険金によって補てんされることが確実であって、請求人の支払う必要のないものだから「確実な債務」にあたらない。また、保険金受取人は銀行であり、乙(被相続人)が保険料を負担した事実は認められないから、請求人の主張は失当である。以上の理由により、本件債務は相続税の課税価格の計算上、債務控除の対象とならない。』 

よく考えれば当然なのですが、債務控除はできないという結論です。


5.実務上の問題

団信の保険金支払手続については下記3点の課題があり、債務控除しても通ってしまう可能性があります。

…鳴△悗諒欷蔚眇狭が行われない

∋長眈斂製颪竜載は正しい

E亠簿には団信加入に関する情報は記載されない

念のため注意下さい。


コンサルタント 佐藤伸吾 発行
社内レポートより転載


記事がお役に立ちましたらランキングに
ご協力お願いいたします。
人気blogランキング



相続の基礎知識
 -相続とは
 -相続の手続きと流れ
 -相続財産とは
 -法定相続とは
 -法定相続分の計算方法
 -遺産の取得と放棄

相続税の基礎知識
 -相続税とは
 -みなし相続税とは
 -相続税の計算方法
 -相続税の申告
 -延納と物納

財産評価の基礎知識
 -財産の種類と評価
 -宅地の評価
 -住宅の評価
 -特殊な不動産の評価
 -農地の評価

遺産分割の基礎知識
 -遺産分割
 -遺言による遺産分割
 -協議による遺産分割
 -調停及び審判
 -特別受益と寄与分

遺言の基礎知識
 -遺言の必要性
 -遺言について
 -遺言書の種類と内容
 -その他の遺言知識

相続対策三原則
 -相続税対策
 -納税資金対策
 -争族対策

 -事後対策について

相続対策の手法
 -法人の設立
 -自社株式の対策
 -生命保険の相続対策
 -養子縁組の対策

生前贈与による対策
 -基礎控除の利用
 -配偶者控除の利用
 -住宅取得資金の贈与
 -生命保険料を贈与する
 -相続時精算課税の対策

不動産の相続対策
 -土地の有効活用
 -アパートマンション経営
 -その他の有効活用
 -事業用資産の買換特例
 -低収益物件の再生
 -貸宅地の整理
掲載されている情報は、執筆時の法令と一般的な事例に基づいており、法改正等に対応できていない場合や、具体的な事案にはあてはまらない場合があります。当サイトの情報を下に行った行為については、当サイトの管理者(高田吉孝)及び(株)青山財産ネットワークスは一切の責任を負いませんので、ご了承ください。
Copyright2004 y.takada. 参考文献一覧
記事・写真などの無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。