高田吉孝のブログ

「生命保険金請求権は特別受益に該当しない」をどう活用するか

この度保険関連の専門である弊社リスクメネジメントグループの佐藤伸吾コンサルタントの協力を得まして、生命保険と相続というテーマで記事を書いてもらうことにしました。

第一回目は、11月7日付け更新情報のところでも書きましたが、「生命保険金請求権は特別受益に該当しない」という最高裁の判例をどう活用するかについてです。


新聞等において「これまでも生命保険金は相続財産ではないことは明らかであったが」と書かれていますが、これは保険金の民法上の扱いについて述べたものです。
保険金が「みなし相続財産」と呼ばれているのは相続税法上のことであり、相続税の計算においては公平性の見地から死亡保険金請求権は相続財産とされています。


2.特別受益に該当するか

特別受益とは、相続人が生前贈与や遺贈を受けていた場合は、他の相続人との公平を期すために本来の相続分から受益分を差し引く制度です(民法903条1項)。
生命保険金請求権が特別受益に該当するかどうかについては、主に下記3通りの見解がありました。

・保険金請求権の取得は固有の権利であるとして、完全に割り切ってしまう考え方。
・実質的な贈与または遺贈があったものとみて、それを取得した者を特別受益者とし、遺留分の規定も適用するという考え方。
・特別受益分として取り扱われるが、遺留分の規定の適用はされないという考え方。

 学説は2を支持するものが多かったものの、実務的には3が妥当ではないかと言われていました。

 ここでさらに問題になるのは、特別受益として算定される額をどうするかで、(欷蔚盂 ∋拱Г辰進欷盈 2鯡麒嵬甼盂曄△函△海譴皸娶が分かれていたようです。


3.銀行のセールストーク

 以下は、今年3月に日経新聞に掲載された、某都市銀行による変額年金保険の広告の一部です。

 遺言を作成しなくても、「財産を残したい人に残せる」という変額年金保険の機能をPRするコピーです。

○○投資型年金では、死亡保険金受取人を指定することができます。つまり「誰に」「何を」「どのくらい」「どのように」遺すかといった自分の思いを形にすることができます。  これにより遺言書に比べて明確に遺産分割ができるため、遺産分割協議における面倒な問題は生じません。

これまで、保険金が特別受益に該当するか否かについて明確な見解が出されていなかったにも関わらず、このようなセールスがされていました。今回の判決により、保険を使った相続対策はより安心して行えることになります。


4.受取人を指定しておかないとどうなるか?

個人の方が生命保険の契約を行う場合に、受取人を「法定相続人」とする場合がみられます。
しかし、何も考えず資産家のお客様がこのような契約をした場合、下記の2つの理由で数十年後の保険金支払時には大変面倒なことがおこる可能性があります。

,い弔了点の相続人を示すのか法律上不明確である。
∧欷蔚發鮗取るためには「相続人代表者選任届」という書類に全員の自署と実印、印鑑証明と戸籍謄本の添付が必要となり、そこで選任された代表者の口座に一括して保険金が支払われることとなる。

保険金は遺産分割協議に関わらずすぐに利用できる資金としてメリットがありますが、分割で揉めている場合はここでもさらに揉めごとを増やすことになってしまうのです。


5.遺族年金支払特約

金融機関が積極的に販売をすすめている一時払変額年金保険ですが、外資系生保の一部の商品に限って「遺族年金支払特約」というものが付加できます。
これは、保険金受取人を複数指定すると、相続発生後には各受取人に対して直接年金が支払われるという特約です。「長男は0、次男と長女に50%ずつ」という指定もできるのです。しかも、2年目以降の年金は毎年の命日に支払われるという気遣いがされている商品もあります。

今回の最高裁判決によって、金融資産に限っては(よほど非常識な分割でなければ)保険を使って残したい人に資金を残せるということになりました。
変額年金保険は80歳まで健康診断なしで加入ができるうえ、特約によって相続税法12条の非課税枠と24条の年金受給権の評価が併用できるという脅威の商品です。


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